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今回から、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」についてお話したいと思います。
長ったらしい名前の為、「原状回復のガイドライン」と略してお話ししますね。
「原状回復のガイドライン」と言っても内容が某大な為、今回は「原状回復」に関してお話したいと思います。

目次

原状回復の意味

賃貸アパートやマンションを退去するときに問題となるキーワ-ドがあります。
それが、「原状回復」です。賃貸借契約書には大体書かれています。
今すぐ賃貸借契約書を見てください。書いてあったでしょう。
なに?賃貸借契約書の字が小さくて読めない!どこに書いてあるかわからない!
よく読んでください。分かりにくい所にひっそりと書いてありますから。
この「原状回復」が賃貸物件から退去する際のトラブルの原因となっているんですが、いったいどんな意味なのでしょうか?
国語辞典で調べると、こんな意味でした。

「ある事情によってもたらされた現在の状態を、本来の状態に戻すこと。例えば、契約を解除した場合、契約締結以前の状態に回復させること。」

まあ、分かったような、分からないような。
法律にも「原状回復」に関することが記載されています。
民法545条1項を見てみますと

「当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。」

なるほど、そう来たか。さっぱりわからないじゃないか。
要するに契約を解除する時は、本来の状態に戻すこと、すなわち、基に戻すこと!のようです。たぶん。
基に戻すことって、賃貸アパートやマンションを借りた時の状態に戻すことなの!?
長く住んでいても、短く住んでいても、普通に生活していれば、壁紙や床材は汚れますし、傷んでくるじゃない。それを基にもどすの?
困ったことに、借りた時の状態に戻すには多額の費用がかかってしまうんですね。
では、賃貸アパートにおける原状回復とはどのような意味なのでしょうか。
そのルールを示したのが、「原状回復のガイドライン」なのです。

ガイドラインでの原状回復の定義

「原状回復のガイドライン」では原状回復を次のように定義しています。
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」
なんか難しい言葉がならんでいますね。
「毀損」なんて読み方すらわかりませんよね。
私なりに文章をわかりやすくすると、

「建物の価値なんて住んでいれば下がっていくんだから、その下がった価値のうち、入居者がわざと壊したり、うっかり壊したり、他人のものと思って雑に扱って壊したり、むちゃくちゃな使い方をして壊してしまった場合は、直してね」こんな感じでしょうか。
要するに「やっちまったとこだけ直して」とのことです。

従い、「借りた当時の状態に戻すことではないですよ!」となるんですね。
入居年数が5年の場合、5年前の状態に戻すことではないんですよ!
5年分の下がった価値を基の価値に戻すのは大家さんの負担ですよ!
世の中の物にはすべて価値があります。
車にも、時計にも、当然、賃貸借アパートにも。

新品の時には100%だった価値のものが、5年、10年と経過すると、価値が半減したり、なくなるものすらあります。
当然、ビンテージの車や時計などは、価値が上がるものもあります。
賃貸アパート、マンションの場合は、よほどのことが無い限り、価値は下がります。
何もしなくても、壁紙(クロス)や床材は古く汚くなるし、水回り(水栓器具)なんて普通に使っていても汚れます。
その「普通に使っていて下がった価値」に関しては、大家さんが負担するんですよと「原状回復のガイドライン」では書かれてるのです。

「普通に使っていて下がった価値」以外の行為とは

では、「普通に使っていて下がった価値」以外の行為とは、いったいなんでしょうか?
今回はクロス(壁紙)を例題として、下の表で説明しちゃいましょう。

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上の表はクロス(壁紙)における経過年数と負担割合を示した表です。
「原状回復のガイドライン」では、クロス(壁紙)の耐用年数を6年としており、6年経過したクロス(壁紙)の退去者負担は1円とされています。
従い、上の表では新築時は当然100%ですが、6年経ったら1円となっております。
0円ではないので注意してください。

例えば、新築で建ったアパートに築後1年目で入居し、2年間住みました。住んでいる間に壁紙(クロス)を破いてしまった場合を考えてみましょう。
因みに2年間住んだということは築後3年での退去となります。
新築時は100%だった価値が入居の時は80%に下がり、そのまま、何もなければ、入居後2年には50%にクロスの価値は下がっています。
但し、壁紙(クロス)を破いてしまったので20%に価値が下がってしまいました。

20%に下がった壁紙(クロス)の価値を全額入居者負担で100%に戻すのかと言ったらそうではありません。
100%から50%に下がった分の壁紙(クロス)の価値50%は大家さんが負担しなければならなりません。
但し、20%に下がってしまった壁紙(クロス)は50%の価値がある為、50%は入居者が負担しなければならないのです。
数字ばかりでよくわからない?
私も書いていて分からなくなってきました。

ようは、価値の下がった分だけ入居者であるあなたが払えばいいのです。
その価値が下がった分を計算し、入居者であるあなたが、支払う金額を計算する方法があるのです。
100000円かかる壁紙(クロス)張替を、あなたが全額払うのではなく、100000円のうち、いくら払うかを計算する方法があるんですよ。
計算方法も含め、次回からご説明しましょう。

尚、クロス(壁紙)に関する退去した時の負担割合に関しては、いずれ詳しくお話しします。

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